私の絵が欲しいと言われて
「いわさきちひろ」さんのような淡くて優しい絵を描いてみたいと思っていた。
六十の手習いとでもいうのか、老後の時間つぶしかボケ防止といおうか、水彩画スケッチを習い始めたが、思っていたようにはうまく描けないものだ。熱心さが足りないのは間違いないので、いっこうに上達しないのは当然の成り行きだったが、絵を描いている時間はたいへん楽しく細々と続けていた。
私は、いつも先生の指導を素直に聞けずに、自分の好き勝手に描いては好きな色で着彩しており、あきれ果て見放された状態だったのだろう。
いつも、“南部さんらしい絵”と評されているが、決して褒め言葉ではなく、いつもへたくそのままで進歩がないと言われているのだった。
私が描いた絵が欲しいという人がこの世にいるなんて、想像したこともなかった。
スケッチ教室の作品展覧会最終了後恒例の打上げ鑑賞&批評会でのこと、私の作品「街を流れる川と橋」が来場者からの評判が良かったと聞いたが、にわかには信じられなかった。さらに、失礼な言い方だが“奇特な人”がいるもので、その絵を欲しいという人がいるという話を聞いた時には、またまたビックリ仰天!
その前のスケッチ教室恒例の作品批評タイムでは、この絵を先生からは「色が濃すぎる、暗い」などと酷評されたばかりだった。反抗したわけでもないが、いつものことなので気にはかけずに、自分では悪くない絵だと思ってる気持ちを大切にして展覧会に出品したものでした。
へたくそな作品を他人にお譲りするなどということは面映ゆくてお断りの返事をしていたのだが、画伯と呼ばれている大先輩からはそんな光栄なことを断ったらだめだと強く言われてしまいました。
何事もあるがまま、なるがまま、素直に、起こることは全て受け入れた方がよいのかなと、ふと思い出されました。小さな出来事がきっかけとなって、新しい世界が開けてくるかも知れない。何事にもプラス思考で取り組もう。いつも自分では言っていることなのだが、思ってもいなかったことが現実となると躊躇してしまうものです。やはり、どんな場面(出来事)でも、いつも思っているように行動することだと、改めて感じた次第です。
余談となりますが、自分の作品を人に譲ってしまって手元になくなるのは寂しいものなので、その作品を原画のようにきれいなコピーにとって残しておこうと思いつき、パソコンを駆使して挑戦してみました。試行錯誤の末でしたが、EPSONスキャナとCanonインクジェットプリンタでcanson画材用紙「ミ・タント(ホワイト)」を使ってみると、素人には見分けがつかないほどの出来映えに仕上がりました。
これも、このような事件がなければわからずじまいだったと思います。やはり、何事にもチャレンジすることですね。そのご褒美をもらったような気がしました。
15.11.17e