ソフトウェア企業の競争戦略 (マイケルA・クスマノ) 2004.12.2ダイヤモンド社発行より

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1.ソフトウェア・ビジネス
〇ソフトウェア・ビジネスを営む企業の四つの基盤
① ビジネスモデル
② 製品戦略
③ 人材(特にソフトウェア技術者)
④ ソフトウェア開発管理 【コア業務】
様々な面で、独自性を発揮しなければ生き残れない
また、市場が急激に変化する可能性を考慮した非常に高い柔軟性を持った組織構造が必要となる

(1) ビジネスモデル
a. ソフトウェア製品企業 ・・・ いつの間にかサービス企業やハイブリッド企業に変貌してしまう
新製品(ソフトウェアライセンス料)販売
b. ソフトウェア・サービス企業
ITコンサル、顧客向けソフト開発、システム・インテグレーション、システムサポート/システムメンテナンス、製品 機能のカスタマイゼーション
c. ハイブリッド・ソリューション企業 ・・・ 製品企業とサービス企業の中間 @
製品とサービス両方を同時に販売できるかどうかが、“事業成功の鍵”となる
サービスやメンテナンスが全社売上高が80%に達する
(ライセンス購入者との長期契約による継続的な製品のアップデートや機能強化)からのもの
結局は、製品企業からも変貌せざるをえない(ソフトウェア事業の事実上の“法則”といえるだろう)

◇ビジネスモデルの比較 (ソフトウェア企業の戦略まとめ)
・製品企業
ベストセラー本の印刷会社を目指すべきだ ・・・なぜなら、販売コストを極端に低くできる可能性があるから
ソフトウェア販売によるライセンス料収益をサービス収益と比較すると、最も大きいのは粗利益がかなり高く、人員 を増やさずに成長することが可能であろう
・ハイブリッド・ソリューション企業とサービス企業
大きな資産基盤(長期サービスとメンテナンス契約を組み合わせた既存顧客の基盤)をもつ銀行的?な業務を目指して努 力すべきだ
この基盤からの収益構造は、ソフトウェアのパッケージ製品を販売するよりも労働集約的でコストは高くつくかも知れな いが、安定した収益の流れが期待できるであろう

(2) (ハイブリッド企業)事業成功の鍵
・「ソフトウェア・ビジネスを営む企業の四つの基盤」のとおり、
ビジネスモデル、製品戦略、人材(ソフト技術者)、ソフトウェア開発管理 といった様々な面での独自性と、高い柔軟 性をもった組織構造が重要だ
・ロイヤルティの高い顧客が握る
製品のアップグレード、バグ修正、カスタマイズなどのサービスについて長期契約を結び、「継続的に」料金を支払うよ うな製品とサービスに満足したユーザーをしっかりとつかんでいることだ

※ 経営者、プログラマー、起業家は一般的に法人向けソフトウェア企業の行く末に何が待っているのか、
また将来に対して効 果的に対処し、適応するにはどうしたらよいかを理解することを忘れないこと

(3) 「ブルックスの法則」
ソフトウェア・ビジネスにおいては、「遅れているプロジェクトに多くのマンパワーを投入しても、より遅らせてしまう」と いうことを言っており、そのとおりの状況が発生してしまうことが多い
だが、本当に怖いのは、継続的に商品を販売、サポート、アップグレードすることはどうにもできそうにないと、顧客から見 切りをつけられることによって、もっと大きな下方へのスパイラルが加速することだ

(4) 安定したレベルの成長と収益性
〇効率的方法 @
・1つのプロジェクトから得られた技術とナレッジを、他に活用する方法を習得
・複数ユーザーのニーズに合うように、ソフトウェア技術をパッケージ化する
・多額の資金を使わず製品をカスタマイズ

〇やるべき大事なこと @
・顧客一人一人との関係を深める
・クライアントとの強力な関係
大企業ほどソフトウェアに高い値段を支払ってくれる傾向が強い
・別のサービスに乗り換えることが難しい”粘っこい”ソリューション
・十分な技術的柔軟性
・技術コンサルティング企業をめざす

 

2.ソフトウェア企業の戦略
(1) 製品、市場、戦略ポジション

(2) 最も健全なソフトウェア企業
・好況時には利益を生みながら急速に成長できる
・好不況にかかわりなく入ってくる継続的な収益源が確保できている
不況時にも生き残れるだけの収益を、製品とサービスからバランスよく確保できる
・基本的財務指標を一般的に言うと、 (一人あたり売上高を20万ドルあれば)  (p53)
売上高営業利益率を20~30%に!
経費を一定の割合に抑える
(販売管理費は25~30%、一般管理費は5%程度、研究開発は10~15%)

(3) ハイブリッド・ソリューション・モデル
・製品とサービスの両方をバランスよく販売
“テイラーメードな製品”も提供
コンサルティング他のサービス
メンテナンスのアップグレード(機能拡張を含むサービスなど)
・ソリューション販売
・カスタマイズ
技術が複雑でPKG製品として売るのが難しい
製品のコモディティ化(価格下落) により、機能の2~30%をカスタマイズ(サービス収益)
・インテグレーション(統合)作業/インストール
・IT投資の上昇/下降に対してもうまく対応
・とてつもなく高度な技術的、組織能力を必要とする
・製品企業とサービス企業の両方のスキルの組合せは非常にマスターし難い
・サービスやメンテナンスの収益は、財務的には弱点であると同時に強みだ ・・・継続的な売上を生み出す
・廉価なセミカスタム・ソリューション

*販売するソフトウェアがあっても、サービス収入が大きい理由 (p43)
ソフトウェアの技術が複雑で、既製のパッケージ製品として売るのが難しいという事情がある
その結果、カスタマイズや特別な統合作業(インテグレーション)とインストールを必要とする「ソリューション」を売 ることになる

 

※「業務テンプレート」の構想時、自分が考えていたことの裏付けとして確信を得た書籍 (備忘コメント)

☞  ソフトウェア企業の競争戦略Ⅱ (PDF)