白山白峰偶成

白山白峰偶成  (はくさんしらみねぐうせい)

摘蔬拾果伐薪糧  蔬(そ)を摘(つ)み 果(か)を拾(ひろ)い 薪(たきぎ)を伐(き)り糧(かて)とす

満箔蚕飢待採桑  箔(はく)に満つ蚕(かいこ)飢(う)え 採桑(さいそう)を待つ

堆雪人家移住麓  堆(うずたか)く雪ふり 人家(じんか) 麓(ふもと)に移り住む

樵蘇簡朴泰存郷  樵蘇(しょうそ) 簡朴(かんぼく) 泰(ゆた)かさ存(そん)す郷(さと)

【通釈】

春になれば、菜を摘み、木の実を拾い、薪を伐って食べて暮らす。

箔にあふれている蚕は飢えて、つみ取られてくる桑の葉を待っている。

うずたかく雪が降り積もれば、人も家も山からおりて麓に移り住む。

山里の暮しは、簡素でつつましいなかにゆたかさがある。

【語訳】

白山白峰=白山山麓の豪雪地帯にある集落。

蔬= 菜、野菜、食用になる草の総称。

拾果=木の実を拾い集める。

伐薪=たきぎ、まきをきる。伐採する。

箔= 蚕にまゆをかけさせるための「すのこ」。まぶし。

採桑=つみ取られた桑の葉。くわをとる、桑を摘む。

堆= うずたかく積もる。

移住=人も家も移り住み生活する。

春になれば、また山中に戻り住む。

樵蘇=たきぎを切りとり、草を刈る。きこり。田舎・山里の人の暮らしむき。

簡朴=簡素で飾り気のないこと。簡単で素朴、つつましい。

郷= むらざと、村里、田舎。

素愚 南部栄司  (陽韻)

平成三十一年十二月二十七日