50号の水彩を頼まれて
友達と久しぶりに会って、大好きなビールを飲みながら食事をした時のこと。
突然、彼は60歳になったら故郷に家を建てて、定宿みたいにして住みたいと言い出したのだ。もう、土地は買ってあるし、建物も外観図や平面図などができ上がっていた。また、敷地内には、ゆったりと過ごしてもらえるゲストハウスも建てたいと言っている。
そのゲストハウスの玄関(エントランス)に、50号大の水彩画を飾りたいので、私に描いて欲しいとのこと。建物が出来あがる時に間に合わせてもらえばいいとも付け加えられた。何の事だかチンプンカンプンで分からないまま聞いてみると、「南部さんの、淡くて、優しい色の水彩は、旅の人の心を癒してくれますね」と言うのだ。
彼が60歳になった時のことなので、まだ時間は十分あるのだが、私はそんなに大きな絵を描いたことがないので、どう返事をしたらよいか躊躇していた。「大丈夫ですよ、待っていますから」と先に言われてしまった。その場では断ることにもできずに、「少し考えてみます」と返事をするのが精一杯だった。
そんな褒め言葉をもらうのは、大へん嬉しいことなのだが、私には高いハードル(難問)ではないか。嬉しさよりも、これからどうしようかと、頭の中が一杯になってしまった。断るにしても、ただ断るだけにもいかないので、先ずは「50号大の絵を描く」とはどういうことかを知ることが先だと思って、早速、大先輩画家のSさんを訪ねることにした。
いろいろと話を聞いていると、私の「ペン画のようなス水彩スケッチでは、50号の絵にはならない」とハッキリ言ってくれた。私も、いつものようにただ絵を描いているだけでは、大きな絵が描けるようになるとは思えなかったのだが・・・。やはり無理だと言われてしまって、逆にホッとしたというのが本音だった。
また、大きな水彩紙に描くには準備が必要で、ベニヤ板などの台紙に水張りをする必要があること。額も、50号の大きなものを作るにはチョットした大工仕事(工作)が必要なので、私には無理だと即座に言われてしまった。S画伯は全て自前で作られていると聞いたが、自宅の小さなアトリエは全て自分で改築したという。大工仕事も本職肌の腕前なのだった、納得。
50号水彩を描くためにやるべき事を色々とレクチャーしてもらった。大きな絵を描くには、小さ目の紙で絵を描いて、それを拡大して写していくようにすることなど、懇切丁寧に教えていただいた。だが、話としては理解できても、実際にどうすれば良いのかは全く想像がつかないままでいる。どうなることやら・・・
ともあれ、彼の故郷の大野城などをテーマに色々と構想してみたいと思っています。早速、お天気の良い日にあてもなく、ぶらっと歩き廻ることからスタートします。何か良い作画のヒントに巡り合えばいいな~。
それから後のことについては、次の機会にしたいと思います。お楽しみに。