後世への最大遺物

後世への最大遺物   I0115

「後世への最大遺物」 内村鑑三著  ・・・」明治27年の講話より

後世へ我々が遺すものは、
第1に、金 :遺産金を社会に遺して逝く
第2に、事業 :金よりも良い遺物は、金を使って、労力を使って、事業に変じ、事業を遺して逝く
第3に、思想(思想を書いたもの、文学) :誰にも遺すことができない
~自分の考えを実行する精神を、筆をもって紙の上に遺す、著述をすることと教育

だが、
最大遺物は、誰にも遺すことができる遺物で、利益ばかりあって、害のない遺物「勇ましい高尚なる生涯」である。

失望の世の中であらずして、希望の世の中であることを信ずること。この世の中は悲嘆の世の中でなくして、歓喜の世の中であるという考えを我々の生涯に実行して、その生涯を世の中への贈物としてこの世を去るということであります。その遺物は、誰にも遺すことのできる遺物ではないかと思う。

もし、我々が正義はついに勝つものとして、不義はついに負けるものであるということを、世間に発表するものであるならば、そのとおりに我々は実行しなければならない。これを称して、まじめなる信徒と申すのです。

我々に後世に遺すものは何もなくとも、我々に後世の人にこれぞというて覚えられるべきものは何もなくとも、「アノ人はこの世の中に活きている間は、真面目なる生涯を送った人である」といわれるだけのことを、後世の人に遺したいと思っています。