生涯健康脳~創造のプロセス

生涯健康脳~創造のプロセス G0123a 【L】

◇生涯健康脳 ・・・健康(認知症にもならず)で長生きするためにも~

「生涯健康脳」 瀧靖之 より

高齢社会になっても、ただ長生きすることが喜ばしいのではなく、「どれだけ健康で長生きできるのか」が切実な問題であり、「生涯、脳を健康に保つにはどうしたらよいのか」・・・。
著者は、人が誕生してから一生を終えるまで、「脳が健康を保ち人間として幸せであり続ける」にはどうしたらよいのか、「すばらしく年を重ねるにはどうしたらよいか」について、その答えを求めて「疫学(えきがく)」という手法を使って研究している。
“疫学”というのは、大きな地域や集団を対象に統計学的な方法から、疾病の原因や傾向をアリらかにするものです。その具体的なデータとは、「認知力」「生活習慣」「遺伝子」「MRI画像」の四つの分野のデータベースです。

〇「生涯健康脳」という言葉を提唱している
「人は亡くなる直前までしっかりとした頭を持ち、認知力を健全に保った状態で生活することが人生の理想であり幸せである。それを皆でめざしましょう」という強い思いを込めて、「生涯健康脳」と名付けました。

〇見た目と脳は一致している
MRI室に入ってきた人が、身なりがきちんと整い、お洒落のセンスが感じられて、ちょっとの会話でも言葉使いが丁寧で、しかも声が若々しい響きを持っていれば、MRI画像を見る前にその人の脳の画像が、私の頭の中にはっきりと映し出されるのです。
経験を通じて気がついたことですが、「身なりと脳の画像は多くの場合一致する」ということです。
身なりが老け込んでいる人は脳も老け込んでいるのです。

〇平均寿命と健康寿命
いまの日本では、平均寿命と健康寿命の差が、約10歳あるといわれています。
その原因は何かというと、転倒による骨折や関節疾患などの運動機能の障害、脳血管障害や認知症、また心疾患や衰弱など様々ですが、その全体の約40%を、実は脳血管障害や認知症の脳関係の疾患が占めています。介護度の一番高い要介護5に至っては、1位が脳血管障害で2位が認知症となっており、全体の60%に及んでいます。

このように脳の血管障害や認知症などが、健康寿命を大きく下げている現実をみると、「いつまでも健康寿命でいたい」と思わずにはいられません。
できれば平均寿命と健康寿命をイコールにする。何時までも脳を健康に保つことが「人間として健康に暮らす」ということだ、と考えています。

〇「生涯健康脳」は認知症の一次予防から
病気にならないように未然に防ぐのが「一次予防」です。
現代の医療では残念ながら三次予防が中心になっていますが、これからの超高齢社会に対応するには、この一次予防が大変重要になってきます。

〇アンチエイジングより「スマートエイジング」で
スマートエイジングは、「加齢そのものがすばらしいこと」という考えに立っています。
スマートとは、賢いという意味です。

加齢していくことで、さまざまな能力は確かに低下していきますし、辛いことが多くなっていくことも事実でしょう。しかし、年を重ねることは、長年の知識や教養、人脈の積み重ねによってもたらされる豊かさが増していくことでもあります。
アンチエイジングは、加齢をネガティブに後ろ向きにとらえているのに対して、“スマートエイジング”は、加齢を「知的に成熟する人生の発展」として、ポジティブに前向きにとらえているのです。

○認知症は脳の老化とは違う
日常生活で、部屋に入った瞬間「あれっ?何しに来たんだっけ?」とか「あれ、どこにしまったっけ?」などと、思わず苦笑いをされた方もいると思いますが、でも大丈夫です。これは加齢によって自然に起こる「物忘れ」といわれる現象で、医学的には「良性健忘症」といいます。

「認知症」というのは、記憶の働きや思考力・判断力などをはじめとする認知機能が低下して、日常の生活に支障をきたす症状のことを言います。 🌸
加齢によって起こる自然な老化現象の延長にあるものではなく、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など脳の血管に起こる病気や、アルツハイマー病などの病気によって引き起こされる症状なのです。
認知症は、病気の症状として受け止めることが大切です。 (p59)
認知症には、脳血管性、レピー小体型、アルツハイマー型の三つに分かれます。(三大認知症)
アルツハイマー型認知症は、階段を降りるように進行するものです。

〇“睡眠”が認知症の原因物質を洗い流す
原因物質といえる「アミロイドベータ」などが脳内に蓄積されますが、睡眠によって洗い流される可能性があることがわかってきたのです。これが事実であるならば、認知症を引き起こすアミロイドベータを「眠る」ということでどんどん排出することが出来ることになります。

〇認知症のケアについて
その効果が話題になっている「ユマニチュード」という認知症ケアの手法は、「見る」「話しかける」「触れる」「立つ」を四つの柱として、150の具体的な手法からつくられています。 (p70)
このユマニチュードが、なぜ奇跡のような効果をもたらすかということは、脳のストレスホルモンに関係があると考えられます。
優しくされると脳のストレスホルモンが減るのです。脳内のストレスホルモンを減少させ、脳の興奮を鎮めることによって、患者さん本来の姿を取り戻させているといえます。

〇有酸素運動が脳を活性化させる
では、認知症にならないために、脳を意図的に活性化させるには、1日たった30分歩く程度の「運動」がよいのです。
なぜ歩く程度の運動が良いのかというと、「歩く」ことが、しっかり呼吸をしながら継続的に酸素を体に取り込む運動、つまり「有酸素運動」になっているからです。この有酸素運動こそが、脳のために最も良いことなのです。 (p80)

〇脳に良くないことは
・飲酒は脳を委縮させる
・内臓脂肪型の肥満は脳に大敵
・中高年の肥満は、将来の認知症のリスクを上げる
・糖尿病・動脈硬化・高血圧が認知症のリスクを上げる
・ストレスは海馬を委縮させる
・大きな心の傷は、海馬も帯状回も委縮させる

脳の最高の栄養素「知的好奇心」
「運動」と並んで、脳を活性化させる重要な要素が「知的好奇心」です。
さまざまなことに興味関心を持ち、いつもワクワクときめいている状態は脳にとても良いのです。
探究心・冒険心・追及心などは、みな「知的好奇心」です。 (p106)

新しいことを学ぼうとするときに、自分の興味関心のあることはスグに覚えられるのに~、ということがあります。調査の結果、「人は好奇心を抱いている時には「ドーパミン」という脳内物質が分泌されて記憶効果がアップする」ということを科学的に証明したのです。
さらに、「好奇心」を持って取り組んだ時の記憶効果は、「短期的な記憶」だけでなく、「長期的な記憶」にもなることがわかりました。
「好奇心」を「記憶」に結びつける、この「ドーパミン」は、好奇心を抱いた段階ですでに分泌されることもわかっています。

「これも知りたい、あれも知りたい」「これもやりたい、あれもやってみたい」という「知的好奇心」こそ、まさに脳の最高の栄養素と言えます。

「趣味」は知的好奇心を刺激する
脳にとって知的好奇心が最高の栄養素なのですから、「趣味」は脳にとって素晴らしい効果が期待できます。いま趣味を楽しんでいる人はもちろんですが、昔やっていたことをもう一度始めたり、これから新しいことを始めるのも、脳には刺激的なことですばらしいご馳走といえます。

「新しいこと」をやると脳が活性化する
趣味にとどまらず、脳はこれまでにやったことのないことをすると、さまざまな領域が活性化します。未だ使っていない脳の領域が刺激されると、脳細胞間のネットワークが育つからです。「これまでにやったことのないこと」をやってみるだけでも、大いに効果が期待できます。
やってみたい新しいことが「趣味」となれば、申し分ないでしょう。
そして、脳はいくつになっても、使えば使うだけどんどん進化するのです。

脳によいこと(その他)
・二つの作業を同時に行う「デュアルタスク」を、好きなことや趣味に取り入れる
・人との交流「コミュニケーション」が、脳を健康にする
音楽は、脳に百利あって一害なし (音楽は脳の報酬系を刺激する)

「寝る子は育つ」は本当だった
8~9時間ちかく寝ている子供たちは、5・6時間しか寝てない子供たちに比べて、相対的に海馬の体積が大きいことがわかったのです。 (p131)

また、子供のころの習慣が、脳にはさまざまに大きく関係することがわかってきたので、子供の頃の過ごし方の重要性が明らかになってきました。

またまた、朝食でご飯を食べている子供のほうが、菓子パンを食べている子供よりIQ(知能指数)の平均値が高いという結果も出ています。
これは、パンはGI値が高めで、菓子パンなどは特に高くて、反対に、ご飯はGI値が低いということが関係しています。
「GI値」とは、食べた物が体内で糖に変わり、血液中の血糖値の上がるスピードのことです。
子供たちの脳は、発達のためにエネルギーもたくさん必要になります。そのため、脳に長い間エネルギーが保たれる「GI値」の低い食べ物の方が良いのです。 (p135)

幼年期、青少年期、成人期、壮年期、熟年期と、脳と人の一生の関係を調べていくと、「子供の頃に知的好奇心が旺盛な子は、そうでない子より認知症になりにくく、自分の望む人生を送れる可能性が高い」ということがいえます。
「子供の知的好奇心」が「生涯健康脳」であるための重要な要素であることがはっきりしてきます。

学力ということに注目してみても、塾などに通い、ただ知識としての受験勉強をして成績が良い子と、「知的好奇心」が旺盛で学ぶことが楽しく、その結果として成績が良い子では、その脳の中身が違います。いわば勉強という「記憶」の量で勝負するのと、「知的好奇心」がベースとなった脳のネットワークで勝負することとの違いともいえるのではないでしょうか。 (p141)

〇いくつになっても「海馬」の体積は増える
「脳の細胞は大人になったら、あとは減るだけ」と、当然のように誰もがそう思ってきました。脳医科学の世界でも、脳の神経細胞は加齢とともに減る一方で、もう新しく生まれないと思われてきたのです
しかし、記憶や脳の中枢を担う海馬だけは、いくつになっても神経細胞が新しく生まれ、海馬の体積を増やすことがわかったのです。つい、十数年前の出来事です。 (p148)

〇脳は「トレーニング」で変化する
脳は、一般的に12歳前後の思春期の頃にはほぼ完成するとわれています。そして完成した後の脳は従来、スタティック(静的)で形態が変化しないものだと思われてきました。
ところが頭頂葉や側頭葉の体積が増えたということが衝撃的に発表されました。脳はスタティックなものではなくダイナミック(動的)なもので、脳はトレーニングによって変化するものであることがわかったのです。つまり脳には、外部からの刺激や作用によって形が変化する「可塑性(かそせい)」があるということです。
これらの可塑性は若年層に多く見られるものですが、健常な高齢者を対象にした検証でも同じような結果が得られたという報告があります。
中年期、または高齢であっても、脳は変化する可能性が充分にあるということです。 (p150-2)

〇生活習慣が遺伝子を超える
アルツハイマー型認知症は遺伝子の影響を受けることがわかっています。
遺伝子についていえば、人の脳や認知力は領域や種類にもよりますが、70%程度が遺伝子要因によって、残りの30%程度は生活習慣によって決まるといわれています。しかし病気についていえば、ひとつの遺伝子で病気になることはまれですので、仮に30%の生活習慣を変えることで、病気のリスクを小さくすることができるはずです。(p162)
また、脳のネットワークは、壊れた領域をカバーするといった奇跡と思えることを起こすことがあります。

 

□脳の中の構造
人間の脳の中をのぞくと、その構造は会社の組織と大変よく似ています。 (p46)
脳も同じように、それぞれの領域で与えられた役割を担い、他の領域と神経細胞をつなぎあいながら、協調したり助け合ったりして日々仕事をこなしています。

・人間らしさは「前頭葉」にある (p47)
前頭葉は、言葉を話す・コミュニケーションをとる・思考する・意思決定する・意識や注意を集中する・注意を分散する・行動を制御する・情動の制御をする・新しいものを創造する・記憶のコントロールをするなど、人間として最も高度な働きをしています。
これらの働きは前頭葉の最も前にある「前頭前野」に集中していて、大きさは灰白質の30%を占めます。これほど大きな領域を持っている生物は、人間以外に存在しません。
「人間らしさ」「人間の心」はまさに前頭葉にあり、これこそが「認知力」そのものといえます。

・最初に発達する「後頭葉」は、「ものを見る」働きを持っている
・同じように早く発達する「側頭葉」は、「音を聞く」などの働きがある
生きるために必要な部分から脳は発達したと考えられます。

・脳の中の高速道路 (p52)
膨大な数の神経細胞が、まずそれぞれ正確な位置に配置されると、道路がその一つ一つの神経細胞をつなぐことによってできます。そしてどんどん結合し回路ができます。
ある程度回路が完成したら、よく使用する部分はより早く情報を伝達できるような高速道路に変えて、逆にあまり使わない部分は枝を切り離していくのです。
⇒ まさに私たち自身が脳をどのように使うのがよいか、その重要性が見えてきます。

・「海馬」が記憶をコントロールする (p53)
前頭葉以外にも人間らしさをつかさどる大切な領域が、「海馬(かいば)」です。
側頭葉の奥深いところにあります。
海馬は「記憶全体をコントロールする」という大切な役割を持っています。
また、短期記憶を受け取り、保存の必要性を判断したり整理整頓したりして、長期記憶を担うそれぞれの領域に移動、保存させる働きがあります。
記憶の司令塔としての働きだけでなく、さまざまな領域と繋がることによって、前頭葉をはじめとする高次機能に大きな影響を与えています。 ・・・脳の“ハブ空港”ともいえます

 

◇創造のプロセス   F0804b 【X】

「ほがらかな探究」 南部洋一郎に掲載されている
(茂木健一郎が解く 先輩南部陽一郎のひらめき)より   (p52)

は、喜びを感じて楽しんでいるときに一番よく働く
孔子は論語で「知ることは好きなことに及ばない。好きなことは楽しむことに及ばない」と言っているが、
人間の脳は、楽しむことによって、潜在的な能力を最も発揮できるんじゃないか。
「楽しみながら努力する」というのは、一つの心得だ。

〇“創造”のプロセス
創造のプロセスは、実は“記憶”に近いだろうと考えられている。
記憶は側頭葉に蓄えられ、それが前頭葉に引き出されてくる。普通の記憶の想起というのは、実際に知っていることを思い出すことだが、“創造”は「今までにない記憶」をつくっていく。

* 創造性 = 体験(側頭葉) × 意欲(前頭葉)
創造性というのは、体験と意欲の掛け算だとよく言っている。
体験が側頭葉に蓄えられ、前頭葉が「こういうものが欲しい」とリクエストを出して、リクエストに一番近いもの、あっているものが側頭葉のアーカイブの中から引き出されてくる。その時に、
アーカイブにあるそのものが引き出されるのではなく、結びつきによって「新しいもの」が生み出される。
⇒ それが、創造性です。
創造とは、「何かをゼロから生み出すもの」というイメージがありますが~ 、そんなことではなく、
どんな人でも、体験・経験が無ければ「創造」はできません。ですから、常に考え、常に問いかけていないといけないのです。記憶のアーカイブを蓄えると同時に、常に「こういうものが欲しい」と考えていないと・・・

〇(楽しむことと並んで大事なのは) リラックスしていること!だと思う
しなやかさというか、“ひらめき”というのは、0.1秒の間に脳のかなりの広い部分の神経細胞が非常に集中的に活動し、その結果が瞬間的に定着される現象です。
それはいつ起こるか分からない。というのは、自分の内面に耳を傾けているというか、自分の内面と対話している人じゃないと、ひらめきを逃してしまうのです。
・・・ すごく根を詰めて徹底的に考える一方で、リラックスして、いつ来るか分からないひらめきを、それが起こったら逃さないように捉える。その両方が出来ないと、偉大な発見などが出来ないんだと思う。

 

〇“ひらめき”は脳の学習、「学びのプロセス」の一つ
学校の勉強も、ひらめきや創造性も、同じ「学習プロセス」の一つ。
ひとつながりのものなので、ひらめきを育むというのは~、“一生学び続ける”ということです。それ以上の楽しいことは、脳にとってはない
今は、皆がなんか「ラクしよう」ということになっているけど、それだとやっぱり、脳の潜在的な喜びというのは引き出せないと思います。

 

※自分だけが自分のことをよく知っているので、それぞれの分野で、今より自分を高めるという強い倫理観を持つことが大事じゃないだろうか。
「自分を高めるためには、どうしたらいいか」を常に考え、努力していれば、それぞれの人の人生における何かが得られるはずです。