林住期はやりたいことをする
インド古代のマヌ法典では、上流階級の生涯を四つの時期(四住期)に区切り、それぞれの生き方を示唆する興味深い思想がある。
それを今日の日本と対比してみると、「学生期 がくしょうき(青年/青春)」は準備・学習の期間、「家住期 かじゅうき(壮年/朱夏)」は家庭を築き仕事に励む期間、「林住期 りんじゅうき(初老/白秋)」は現役を退いたあと質素だがしがらみ(柵)から自由になる時期、「遊行期 ゆうぎょうき(老年/玄冬)」は解脱を目指す時期、ということになろう。
後半はオマケのようだが、林住期は人生の最も豊かな絶頂期になると想像できる。家住期において十分にその義務を果たした人間は、以降はまさに自己本来の人生に向かい合い、必要からではなく興味や好奇心によって「本当にやりたいこと」をすることができるのだろう。
吉田兼好は「死は前よりしもきたらず」と言っている。死は背後から音もなく忍び寄ってきて、「時間ですよ」とポンと肩をたたくということを覚悟して、真剣に楽しむべく生きたいものです。
私は、“老い支度”というか、六十の手習いで、水彩画&スケッチを習い始めました。いわさきちひろさん(童画家)のように、淡くて優しい絵を描きたいとかねがね思っていたからです。また、熱心なお誘いをうけたこともあり、高校時代にかじった程度の漢詩(創作)の勉強もスタートさせました。もう一つは、私が伝えたいことを文章でも表現したくて、準備を始めました。楽しい時間を過ごしながら、ひとさまに見てもらえるくらいの作品を作りたいと思いながら、挑戦を続けています。
最近のトピックは、展覧会に出品した私の水彩スケッチ画を欲しいという人が現れてびっくりしたこと。越風香草に掲載された「秋田竿燈祭」が、漢詩会報の編集後記欄に“自筆のスケッチ画を添えたユニークな漢詩発表”として紹介されたことにも驚きました。
今後、「老いて(林住期)は楽しむべし」ということを漢詩にしたいと思っています。
15.12.28e