乗鯨神来島

乗鯨神来島  鯨(くじら)に乗り神(かみ)来たる島

鷗飛濤雪影魚鱗  鴎(かもめ) 濤雪(とうせつ)に飛び 影(かげ)は魚鱗(ぎょりん)、

昔日叢林今在神  昔日(せきじつ)の叢林(そうりん) 今も神(かみ)を在(み)る。

萬古尊崇冥海泛  万古(ばんこ) 尊崇(そんすう) 冥海(めいかい)に泛(う)かぶ、

乘鯨祖到北涯津  鯨(くじら)に乗り 祖(そ)到(いた)る 北涯(ほくがい)の津(きし)。

【通釈】

白い大きな波に、鴎が飛びまわっていて、魚鱗が光って見える。

大昔のままの原生林のやぶや林には、今もなお神の姿を見ることができる。

遠い昔から尊び崇められてきた島が、奥深く神々しい暗い海にうかんでいる。

鯨に乗って祖先(神様)が、北のはて(安島)の岸へやってきたという。

【語釈】

乗鯨神来= 大昔に神様(祖先)が鯨に乗ってやって来たという「乗鯨神来」伝説。

濤雪= 大波の白く湧き立つさま。

昔日= 過ぎ去った昔。

叢林= 低い木の茂み、やぶや林。今も原生林が残っている。

万古= 遠い昔。おおむかし。永遠、いつまでも。

尊崇= とうとびあがめる。

冥海= 奥深く神々しい暗い海。日本海。

祖到= 祖先(神様)がやってきた。遠い祖先のことを神といっている。

北涯津= 越前雄島がある北の涯(はて)の岸。津は、きし(岸)、がけ、わたしば。

素愚  南部栄司  (真韻)

令和二年四月二十一日 20.04.21