宇宙偶成一
宇宙偶成一
卜遯還屯七十醒 遯(とん)また屯(ちゅん)と卜(ぼく)し 七十にして醒(さ)む
獨浮小筏向滄溟 独り小さき筏を浮かべ 滄溟(そうめい)に向(たい)す
乾坤萬象総虛影 乾坤(けんこん) 万象(ばんしょう) すべて虚(きょ)にして影
止觀而今讀易經 止観(しかん)せんと 而今(じこん) 易経を読む
【通釈】
易経の卦の遯(とん)また屯(ちゅん)のようだとうらないさだめて、七十歳になってやっと目が醒(さ)めた。
そして、独りで小さないかだに乗って、滄溟(青く薄暗い海)にこぎ出している。
天地自然のあらゆるものは、空虚(何もない空っぽ)で実体のない影(像)がただ映っているだけのようだ。
宇宙の真理(本当の姿)を知りたいとおもい、いま易経を読んでいる。
【語訳】
遯= 「のがれる」。わずらわしさから遯(のが)れる。
屯= 「悩み・障害」。物の始生。動き出す前途には色々な悩み・障害がある。
小筏=小さないかだ。
滄溟=青く薄暗い意。海をいう。
乾坤=天と地。天地自然。易経の卦(乾為天、坤為地)。
止観=宇宙の真理を知る、さとる。
易経=陰陽六十四卦によって、自然と人生の変化の道理(宇宙観)を説いた書。 四書五経のひとつ。
素愚 南部栄司 (青韻) 19.01.28a